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法人破産の手続きと費用・代表者への影響をわかりやすく解説

代表破産・倒産

2024.08.252025.10.25 更新

法人破産の手続きと費用・代表者への影響をわかりやすく解説

「資金繰りの悪化で返済の見通しが立たない」「このまま経営を続けて本当に良いのか不安だ」 このように、追い詰められた状況で出口の見えないトンネルの中にいると感じている経営者の方は多いのではないでしょうか。

法人破産は、そのような状況を法的に整理し、代表者自身が再出発するための正当な手段です。しかし、「法人破産=企業の終わり」というイメージから、なかなかその決断に踏み切れない方もいらっしゃると思います。

本記事では、法人破産という重い決断を下す前に知っておくべきこと、具体的な手続きの流れ、費用、そして代表者個人が受ける影響と対応策について、専門用語を避けながら分かりやすく解説します。

感情に流されず正確な情報に基づいた判断ができるようになりますので、再出発のための道筋を冷静に見極めたい方は、ぜひ参考にしてください。

こんな人におすすめの記事です。

  • 資金繰りが限界で、破産以外の選択肢も含めて最適解を知りたい方
  • 代表者個人の連帯保証や自己破産への影響を具体的に把握したい方
  • 法人破産の手続き全体(期間・費用・必要書類)を一気に理解したい方
  • 破産後の再就職・再起の現実的なステップを知りたい方

記事をナナメ読み

  • 法人破産は会社を終わらせる手続きだが、代表者が再出発するための正当な選択でもある。
  • 手続きを誤ると、債権者対応や財産整理でトラブルが起きやすい。
  • 費用や流れを知らないまま動くと、手続きが長期化して精神的にも消耗する。
  • 専門家に依頼すれば、督促も止まり、最短で負担を減らす道が見えてくる。
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法人破産を考えたらまず確認すべき3つのこと

法人破産を考えたらまず確認すべき3つのこと

資金繰りの行き詰まりがあったり借入金の返済が難しくなったりして「法人破産」という選択肢が頭をよぎることもあるでしょう。しかし、すぐに手続きを進めるのではなく、まずは落ち着いて現状を整理しましょう。

ここでは法人破産を真剣に検討する前に、最低限確認しておきたい3つのポイントを紹介します。

1.資金繰りが厳しいときは「破産」以外の選択肢も確認

「破産」は一つの解決策ですが、それは最終手段で、資金繰りに行き詰った場合でも、以下のように会社を立て直す方法が残されている可能性があります

  • リスケジュール(返済条件の変更)
    金融機関と相談し、毎月の返済額や返済期限を見直してもらう
  • 私的整理 
    裁判所を通さずに、債権者と個別に話し合い、返済条件を調整する
  • 事業再生 
    不採算部門の売却や、新たな出資者の確保などにより事業を再構築する

これらの選択肢には専門的な知識や交渉が必要です。弁護士などの専門家に相談することで、具体的なアドバイスを受けられるでしょう。

「破産しかない」と思い込まず、まずは他の可能性を確認してみることが重要です。

2.法人破産を決める前に整理しておきたいポイント

法人破産が選択肢に上がってきてもすぐに決断してはいけません。まずは冷静に会社の現状を整理することが大切です。あらかじめ以下の点をまとめておきましょう。

  • 会社の資産
    現金や預金、不動産、車などをリストアップします。売掛金(取引先からまだ受け取っていない代金)や在庫もすべて含めます。
  • 会社の負債
    借入金や買掛金(仕入れ先への支払い)、未払金、税金、社会保険料などです。誰にいくら払う必要があるのかを明確にします。
  • 連帯保証人の確認
    代表者個人が借入などの連帯保証人になっている場合、破産後の影響が大きいです。契約書などで必ず確認しておきましょう。
  • 従業員の対応
    従業員がいる場合は、退職金の支払いや手続きについても事前に検討が必要です。

これらの情報を整理したうえで、本当に破産が必要なのかを弁護士と一緒に検討できます。他の選択肢がないか話し合ってみましょう。

3.今すぐ専門家に相談すべきケースとは?

「もう少し頑張れば…」「まだ大丈夫かもしれない」と一人で問題を抱え続けると状況はさらに悪化します。

次の状況が一つでも当てはまる場合は、今すぐ弁護士などの専門家に相談してください。

  • 資金ショートが寸前、またはすでに発生している
    手元の資金が尽き、支払いが滞り始めている状態です
  • 銀行からの新規融資が完全に止まっている
    追加融資が望めず、資金繰りの見通しが立たなくなっています。
  • 債権者からの督促が激しい
    毎日のように取り立てを受け、通常業務に支障が出ている状況です
  • 重要な取引先との関係が悪化している
    信用を失い、今後の事業継続が困難になる可能性があります
  • 精神的に限界が近い
    心身ともに疲れ切り、冷静な判断ができなくなっている状態です

これらはすべて「経営破綻の危険信号」だと認識してください。早めに専門家に相談すれば、それだけ選択肢が広がります。

「もう限界かもしれない」と思ったら、一人で悩まず今すぐ相談してください。

法人破産とは

法人破産とは

「法人破産」という言葉は不安や重さを伴うものかもしれません。しかし、これは会社が借金を返せなくなった時に債務を整理する法的な手続きです。

会社を終わらせるための正式な道筋ともいえます。まずは法人破産の基本を正確に理解していきましょう。その知識は、今後の会社運営を考える上で最善の選択をするための土台となります。

個人破産(自己破産)との違いは?

「法人破産」と「個人破産(自己破産)」は名前は似ていますが全く異なる手続きです。それぞれの違いを明確に整理しておきましょう

■法人破産

法人破産とは、会社(法人)を対象にした破産手続きです。返済が困難になった会社の借金を法的に整理し、会社を清算して終了させることが目的です。

まず会社が持つ財産をすべて売却し、その代金を債権者(お金を貸している相手)に分配します。それでも返しきれなかった借金を、原則として法的に消滅し、最終的に会社そのもの(法人)が消滅します。

■個人破産(自己破産)

個人破産(自己破産)は、あなた自身が対象となる破産手続きです。増えすぎた借金を法的に整理し、生活を立て直すことを目的としています。

手続きでは、原則としてあなたの財産を処分し、それを債権者への返済にあてます。そのうえで裁判所から「免責(借金の返済義務を免除すること)」の許可が出れば、残った借金は帳消しになります。

会社が法人破産をしても、代表者個人の借金まで自動的に消えるわけではありません。

特に、会社の借金に代表者が連帯保証として関わっている場合、その債務は個人に引き継がれます。これは法人破産と個人破産のもっとも重要な違いの一つです。

法人破産はあくまでも会社を整理するための手続きです。そのため代表者個人の債務や責任とは切り離して考える必要があります。

法人破産ができないケースと条件について解説

法人破産は、どの会社でもすぐに利用できる手続きではありません。手続きを進めるためには、一定の条件を満たしている必要があります。

法人破産が認められる最大のポイントは、会社が支払不能の状態であるかどうかです。これは、会社が借金を返す見込みが完全になくなっている状態を意味します。具体的には次の状況が支払い不能と判断されます。

  • 債務超過の状態
    会社の資産をすべて売っても借金を返しきれないほど負債が多い
  • 資金繰りが完全に破綻している
    日々の運転資金が不足し、買掛金や給与、税金などの支払いが継続的に滞っている
  • 事業の再建が見込めない
    今後どれだけ努力しても、売り上げの回復や経営改善が見込めない

逆に、まだ支払能力があると判断されたり事業再生の見込みがあったりする場合は、破産手続きが裁判所に認められないこともあります。

また、破産手続きには費用がかかるものです。例えば裁判所に納める予納金や、弁護士に支払う手数料などがあります。

これらの費用が準備できない場合は、手続きの開始が難しくなるケースもあります。現在の会社の状態が「破産に該当するかどうか」を正しく判断してもらうためにも、初期段階での相談をおすすめします。

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法人破産のメリット

法人破産は、追い詰められた経営者にとっての大きなメリットがあります。「もう無理だ」と感じる状況から抜け出し、再出発をするための制度です。

  • 会社の借金から解放される
    最大のメリットは会社の借金が法的に帳消しになることです。会社は消滅しますが、借金の返済義務も消え、精神的な負担からも解放されます。
  • 債権者からの督促が止まる
    弁護士が受任通知を送付した時点で、債権者による取り立てや督促はストップします。経営者は日々のプレッシャーから解放され、手続きに集中できます。
  • 公正な手続きで清算が行われる
    会社の財産は、法律に基づいてすべての債権者に公平に分配されます。誰か一人を優遇したり、不当に扱うようなことはありません。
  • 新たなスタートが可能になる
    会社はなくなりますが、代表者個人として借金問題を整理するチャンスです。新しい人生や事業に踏み出す機会が得られます。

破産は「終わり」ではなく、「次に進むための選択肢」だと知っておきましょう。自分と会社を守るためにも、前向きに検討することが大切です。

法人破産のデメリット

法人破産には多くのメリットがありますが、避けられないデメリットも存在します。手続きを検討する前に、これらの点をしっかり理解しておくことが大切です。

  • 会社が完全に消滅する
    法人破産をすると、会社は法的に終了します。長年築いてきた事業や従業員、取引先との関係もすべて失われるでしょう。これは経営者にとってもっとも精神的に厳しい部分かもしれません。
  • 会社の財産はすべて処分される
    不動産や設備、在庫、預金など、会社が持っていたすべての財産が対象です。債権者への返済のために売却(換価処分)されます。経営者の意思で残しておくことはできません。
  • 信用情報への影響が出る可能性
    法人破産だけなら影響は会社の信用情報にとどまります。しかし、代表者が連帯保証人で個人破産も必要になった場合は違います。

    代表者個人の信用情報(いわゆるブラックリスト)にも影響が出るのです。これにより、数年間は新たな借入やクレジットカードの作成が難しくなる可能性があります。
  • 従業員の全員解雇
    会社がなくなるため、従業員は全員退職となります。退職金の支払いや説明など、従業員への対応も大きな課題の一つです。

法人破産は「リセットの手続き」ではありますが、多くの人や信頼関係にも影響を与えます。だからこそ、メリットとデメリットの両面を理解したうえで、慎重に判断することが重要です。

メリット・デメリットを踏まえた判断基準

法人破産の判断は、大きな精神的負担を伴います。ですが、この苦しい状況を乗り越え前に進むため、次の視点から冷静に考えてみましょう。

「会社の存続」と「あなた自身の未来」を見つめ直す会社を守るために、あなた自身や家族の健康・生活を犠牲にしていませんか?

会社の消滅は大きな痛手ですが、借金の重圧から解放されます。心身の回復や新たな人生を始めるきっかけにもなるでしょう。会社を畳むことは終わりではなく、新しい人生の始まりかもしれません。
「本当に再建の可能性がないか」を見極める資金調達、公的支援、事業売却など、すべての選択肢を検討し尽くしましたか?

もし再建できたとしても、そこに見返りがない、もしくは負担が大きすぎるとしたら、破産という選択肢も現実的に考える必要があります。
「個人保証の影響」も想定しておく連帯保証人になっている場合、法人破産だけでは個人の借金は残ります。

自己破産を視野に入れた場合、今後の生活への影響を具体的にシミュレーションしておくことが大切です。

判断に迷ったときは、必ず弁護士など経験豊富な専門家に相談してください。経営だけでなく、あなた自身の人生設計や未来も含めて、最善の道を一緒に見つけてくれるはずです。

法人破産の手続きの5つの流れ

法人破産の手続きの5つの流れ

法人破産と聞くと手続きが複雑そうで、何から始めれば良いか分からず不安に感じる方も多いでしょう。

しかし、流れを知っておくだけで不安はぐっと軽くなります。ここでは法人破産の手続き全体を5つのステップに分けて分かりやすくご紹介します。

1.弁護士など専門家への相談と受任通知の送付

法人破産を考え始めたら、まず弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。

法人破産は法律に基づいた複雑な手続きだからです。専門知識がないまま進めると、トラブルや手続きの遅れにつながるおそれがあります。

弁護士は会社の財務状況や法的リスクを総合的に判断します。そして最適な対応方法を提案してくれるでしょう。また手続き全体をリードしてくれるので、安心して任せることができます。

弁護士に正式に依頼すると、最初に「受任通知」という書類がすべての債権者に送付されます。この通知が届いた時点で、債権者からの取り立てや督促は法的に停止されるのです。

これにより、経営者は日々のプレッシャーから解放され、落ち着いて手続きに集中できるようになります。この精神的な安堵感は、非常に大きなメリットの一つです。

弁護士への相談は破産手続きの始まりであると同時に、心の重荷を軽くするものでもあります。迷ったときは、一人で抱え込まず、まずは相談してみましょう。

2.裁判所への破産申立てと必要書類の提出

弁護士との相談と準備が整ったら、次は裁判所への破産申立てです。弁護士があなたの代理人となり手続きを進めます。

会社の財産や負債の状況を記載した「破産申立書」を裁判所に提出します。この申し立てにより、正式に破産手続きがスタートします。

申立てには、会社の状況を証明する以下のような書類が必要です。

  • 決算書や試算表
  • 財産目録(資産の一覧)
  • 債権者一覧表(借金の相手と金額)
  • 銀行通帳のコピー
  • その他裁判所が求める資料

これらの書類は弁護士の指示に従って一つずつ準備していきましょう。手間はかかりますが、弁護士がしっかりサポートしてくれるので心配はいりません。

申立ての段階は、法人破産の「本格的なスタート地点」といえる重要な工程です。準備が大変に感じても、一つひとつ確実に進めることがスムーズな手続きにつながります。

3.破産管財人の選任と財産調査・換価処分

裁判所が破産申立てを受理すると、「破産管財人」が選任されます。

破産管財人は、裁判所から選任される弁護士です。あなたの味方でも敵でもなく、中立な立場で破産手続きを管理します。主な役割は以下のとおりです。

  • 会社の財産の調査・管理
  • 財産の売却(換価処分)
  • 売却で得た資金を債権者へ公平に配当する

破産管財人は、会社が持っている財産をすべて調査します。対象は以下のとおりです。

  • 現金・預金
  • 不動産・車両・設備
  • 在庫、売掛金などの債権

必要に応じてこれらの財産を市場価格で売却(換価処分)します。得たお金は債権者への返済(配当)に使われます。

なおこの段階からは、会社の財産はすべて破産管財人の管理下に置かれます。経営者が勝手に財産を動かすことはできません。

破産管財人による調査と処分は、公平な清算を行うための重要な手続きです。弁護士と連携を取りながら、冷静に対応していきましょう。

4.債権者集会の開催と配当手続き

会社の財産調査と換価処分が終わると、次に「債権者集会」が開かれます。債権者集会とは裁判所で行われる会議のことです。破産管財人が以下の内容を債権者(お金を貸している相手)に報告します。

  • 会社の財産状況
  • 売却(換価処分)の進捗
  • 債権者への配当見込み

原則として、会社の代表者も出席が求められます。しかし、弁護士が同席して質問にも対応してくれるので安心してください。

財産の売却で得られたお金(配当原資)は、法律のルールに基づいて公平に分配されます。すべての債権者に全額返済できるケースは少ないです。しかし、できる限り公平な配当が行われます。

この債権者集会をもって、破産手続きは終盤に入ります。弁護士と連絡を取りながら、丁寧に対応していきましょう。

5.破産終結決定までの期間とスケジュールの目安

法人破産の手続きは、ある程度の期間が必要です。全体の流れを知っておくことが、気持ちの準備にもつながるでしょう。

  • 手続き完了までの期間の目安
    破産申立てから手続きの終了までは、一般的に半年〜1年程度かかるのが通常です。ただし、会社の規模や財産の内容、債権者の数などにより前後します。

    財産がほとんどなく、調査や配当が不要なケースでは「同時廃止」という簡易な手続きとなります。その場合は数か月で終わることもあります。
  • 「破産終結決定」で手続き完了
    すべての財産処分と配当が終わると、裁判所から「破産終結決定」が出されます。この決定をもって、会社は法的に消滅し、法人破産の手続きも終了です。

法人破産の流れは複雑に見えても、弁護士のサポートがあれば一つずつ確実に進めることができます。不安な気持ちを抱えたまま一人で悩まず、専門家に相談しながら前へ進んでいきましょう。

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法人破産にかかる費用と相場

法人破産にかかる費用と相場

「破産したいけど、お金がない…」そう悩んで法人破産の手続きをためらっている経営者の方も少なくありません。

たしかに法人破産には一定の費用がかかりますが、費用の内訳を理解し、工夫次第で負担を抑えることも可能です。ここでは、法人破産にかかる主な費用とその相場について、分かりやすく解説します。

弁護士費用の相場と料金体系

法人破産の手続きを弁護士に依頼する場合、最も大きな費用の一つが弁護士費用です。

弁護士費用は会社の規模や負債額、手続きの複雑さによって大きく異なります。一般的には50万円から100万円程度が相場です。中小企業の場合はもう少し低額で対応してくれる事務所もあります。料金体系は主に以下のとおりです。

着手金依頼時に支払う費用です。手続きの成否にかかわらず返金されないのが一般的です。
報酬金手続き完了後に支払う費用です。法人破産では発生しないことも多く、着手金のみですむケースもあります。
実費郵送費や交通費・印紙代などの諸経費です。事務所によって異なります。
相談料弁護士との相談にかかる費用です。初回相談は無料としている弁護士事務所がほとんどです。

「今はそんな余裕がない」と感じていてもあきらめる必要はありません。弁護士によっては分割払いの相談に応じてくれたり予納金と合わせて会社の財産から充当する提案があったりします

まずは現在の資金状況を正直に伝えることが大切です。支払い方法について相談してみましょう。

裁判所に納める予納金の金額と目安

法人破産では、弁護士費用とは別に、裁判所へ「予納金」を納める必要があります。この予納金は、破産管財人の報酬や手続きにかかる費用にあてられるものです。

予納金の金額は会社の規模や財産状況によって大きく異なります。以下はおおよその目安です。

少額管財事件(比較的簡易なケース)約20万円程度が目安です。
通常管財事件(財産が多く、処理が複雑なケース)約50万円~数十万円、あるいはそれ以上になることもあります。
同時廃止(財産がほとんどなく配当できないケース)予納金は不要です。または数万円程度の印紙代・郵便費用のみで済む場合もあります。

予納金は、原則として破産申立て時に一括で納める必要があります。しかし以下のような対応が可能になることもあります。

  • 弁護士が裁判所と交渉し、分割払いを認めてもらう
  • 会社の残った財産から充当するよう提案する

費用が不安な場合でも、まずは弁護士に相談してください。最適な方法を一緒に考えてもらいましょう。

印紙代・官報公告費などの諸費用

法人破産には、弁護士費用や予納金のほかにも細かい諸費用がかかります。

申立印紙代裁判所に破産を申し立てる際に必要な手数料です。数千円程度でしょう。
予納郵券代債権者への通知や書類送付のための郵便切手代です。数千円から数万円程度で、債権者の数により変動します。
官報公告費用破産手続きの開始や債権者集会の開催を「官報」に掲載する費用で、数万円程度かかります。

これらの費用は合計で数万円から十数万円程度になることが多いです。決して無視できない金額だと知っておきましょう。

手続き前に弁護士から内訳を確認し、全体の費用感を把握しておくことが重要です。

法人破産の費用を抑えるポイント

「これだけの費用を準備するのは難しい…」と感じている方もご安心ください。

費用を抑えるためのポイントや支払い方法の相談によって負担を軽減できる可能性があります。費用を抑えるポイントは以下のとおりです。

早めの相談できるだけ早く弁護士に相談することで、会社の財産が無駄に減るのを防げます。

財産が少ない状態であれば、予納金が安価な「少額管財事件」などが適用される可能性が高まります。
複数の事務所で比較検討弁護士事務所によって費用体系や対応は異なります。無料相談を利用して複数の事務所を比較することがおすすめです。

中小企業の法人破産に特化し、比較的リーズナブルな料金設定をしている事務所もあります。
会社の財産を計画的に管理する手続きに必要な費用(弁護士費用や予納金など)を、弁護士と相談し、会社の財産から充当する形で進めることも可能です。

ただし、財産の隠匿や不正な処分は法律で禁止されています。絶対に避けましょう。

多くの弁護士は依頼者の経済状況を理解し、分割払いや後払いなど柔軟な支払い方法に対応してくれます。

「費用がないから無理だ」と諦める前に、まずは正直に状況を伝えて相談してみましょう。

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法人破産後の代表者への影響

法人破産後の代表者への影響

法人破産は「会社の手続き」ですが、代表者にとって個人への影響は最大の不安です。

特に会社の借金の「連帯保証人」になっている場合、その影響は避けられません。ここでは、法人破産が代表者個人に与える影響と、その後の再出発に向けたポイントを解説します。

代表者が連帯保証人の場合の対応とリスク

中小企業では、代表者個人が会社の借金の「連帯保証人」になることが非常に多いです。

この場合、法人破産だけでは個人の借金問題は解決しません。代表者に生じる主なリスクは以下のとおりです。

  • 連帯保証債務が発生する
    会社が返済できなくなった借金は、連帯保証人である代表者個人に返済義務が移ります。債権者(主に金融機関など)は、会社に代わって代表者に一括返済を求めてくるのです。
  • 個人の資産が差し押さえ対象になる
    代表者個人の自宅や預貯金、生命保険なども返済の対象となります。差し押さえのリスクがあるのです。

こうした状況に直面した場合、代表者個人も債務整理を検討する必要があります。主な選択肢は以下のとおりです。

  • 自己破産
    すべての借金をゼロにする手続きです。
  • 個人再生
    借金を大幅に減額し、原則3年で返済する方法です。
  • 任意整理
    債権者と個別に返済条件を話し合い、合意を目指す方法です。

どの方法が最適かは、借金の額や資産の状況によって異なります。この問題は、法人破産と同時、またはその直後に直面する最も重要な課題です。

代表者個人も自己破産が必要なケース

前述の通り代表者が会社の借金の連帯保証人になっている場合、法人破産の後に個人として自己破産が必要になるケースは多くあります。主なケースは以下のとおりです。

  • 保証債務の額が大きい
    個人の収入や財産での返済が現実的に不可能なときがあげられます。
  • 他の債務整理では対応できない
    任意整理や個人再生では対応できないと判断されたときです。

代表者個人の自己破産とは、法人破産とは別に個人として裁判所に申立てる手続きのことです。個人として以下を行います。

  • 個人のすべての財産を調査・換価処分(売却)して債権者に分配します。
  • 残った借金の返済義務を免除してもらいます(免責)。

また、自己破産には、再出発に向けた代償としていくつかの影響が生じます

財産の処分自宅や車、高額な預貯金などは処分されます。ただし、生活に必要な最低限の家財道具や現金(99万円以下)は手元に残せるでしょう。
信用情報への登録(ブラックリスト)数年間は新たな借入やクレジットカードの作成、ローン契約、借入ができなくなります。
一部の職業制限破産手続き中は弁護士や税理士、警備員などの四角に制限がかかります。免責決定後は制限が解除され復職が可能です。
家族への影響原則として、家族に直接の影響はありません。ただし家族が保証人になっている場合はその債務の返済義務が生じます。

自己破産は、確かに大きな決断です。しかし借金の重荷から解放され、再出発するための大切な手段になります。

弁護士は、自己破産に限らずあなたの状況に応じた最善の方法を提案してくれます。まずは一歩踏み出し、相談することから始めましょう。

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法人破産後に再起・再挑戦するためのポイント

会社はなくなっても、あなたの人生は終わりではありません。法人破産はつらい経験ではありますが、新たな人生や事業に挑戦する機会にもなり得ます。

ここでは再出発に向けて意識しておきたいポイントをご紹介します。

心と体をしっかり休める精神的な重圧から解放された今こそ、まずは心身を休めることが何よりも大切です。無理に何かを始めようとせず、心身の回復を最優先にゆっくりとしてください。
専門家に継続的な相談をする法人破産の手続きが終わってもすぐにすべてが解決するわけではありません。債務整理や今後の生活設計などに不安があれば弁護士や公的機関に相談を続けましょう。
再就職を検討するこれまでの経営経験は、多くの企業にとって価値あるスキルと知見です。破産履歴は就職活動において法律上の制限にはなりません。面接で聞かれた場合は正直に説明し、再出発の意欲を伝えることが大切です。
新たな事業への挑戦もできるもう一度事業を始めたい気持ちがあるなら、これまでの経験をもとに、新しい視点での起業も可能です。資金調達には家族や知人の支援やクラウドファンディング、公的な創業支援制度などがあります。信用情報に影響はあっても、資金調達の選択肢は広がっています。
公的な支援制度の活用生活再建のために利用できる制度がないか調べてみましょう。市区町村の窓口や社会福祉協議会に相談すれば、住宅支援や各種手当の情報を得られます。

法人破産は、確かに大きな節目です。しかし、この経験を乗り越えたあなたには新しい人生を歩む力があります。再出発に向けて一歩ずつ進んでいきましょう。

法人破産は一人で悩まず専門家に相談しよう

法人破産は一人で悩まず専門家に相談しよう

ここまで法人破産の手続きや、代表者個人への影響について解説してきました。読み進める中でかえって不安が増したかもしれません。

ですが、法人破産は一人で抱え込むものではありません。迷いや不安がある今こそ、専門家の力を借りるべきタイミングといえます。

法人破産を早めに相談すべき理由とメリット

「もう少し頑張れば…」という気持ちは経営者として当然のことです。痛いほどわかりますが、状況が悪化する前に早めに専門家に相談することが大切です。最善の結果につながります。

解決策の選択肢が広がる相談が早ければ早いほど、破産以外の再建策も検討できます。より有利な条件での債務整理など、選べる選択肢が増えるのです。時間に余裕があるほど冷静になり、最適な判断ができるようになります。
精神的な負担が軽くなる一人で抱え込んでいると、精神的に追い詰められ正常な判断が難しくなります。専門家に状況を話すだけでも、心の重荷が和らぐはずです。弁護士はあなたの立場に寄り添い、今後の見通しを具体的に示してくれます。
債権者からの督促が止まる弁護士に依頼しが受任通知が債権者に送付されると、法的に督促が止まります。これにより、精神的なプレッシャーから解放され、手続きに集中できる環境が整うのです。
手続きがスムーズに進む法人破産の手続きは複雑で、専門的な知識が必要です。弁護士に依頼すれば、書類作成から裁判所とのやり取りまで、すべて専門家が代行してくれます。あなたは、生活再建や再出発の準備に専念できます。
費用面も相談できる費用が心配な方もいるかもしれません。しかし、弁護士はあなたの経済状況を理解し分割払いや柔軟な対応を提案してくれることがあります。「お金がない」と諦めずに、まずは相談してみましょう。

早く相談すればするほど、選択肢が広がり、負担は軽くなります。まずは専門家に無料相談をしてみることをおすすめします。

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相談時に準備しておく書類

初めて弁護士に相談するとき「何を持っていけばいいの?」と不安に思うかもしれません。

事前に以下の書類を準備しておくと、相談がスムーズに進みます。的確なアドバイスを受けやすくなるでしょう。

会社の基本情報がわかる書類会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
定款
会社の財産に関する書類過去2~3期分の決算書
最新の試算表
銀行通帳のコピー(全口座、直近1年分程度)
固定資産に関する資料(不動産、車両、機械設備など)
売掛金、在庫の一覧表
保険証券(生命保険、損害保険など)
会社の負債に関する書類借入金の契約書や残高証明書(銀行、ノンバンクなど)
買掛金や未払金の一覧表
税金や社会保険料の滞納に関する書類
手形、小切手に関する書類
代表者個人に関する書類本人確認書類(運転免許証など)
印鑑(認印または実印)
会社借入の連帯保証契約書(該当する場合)

これらの書類が完璧に揃っていなくても、まずはわかる範囲で構いません。大切なのは「相談したい」という気持ちです。何も持たずに相談しても問題ありません。まずは状況を話し、一緒に弁護士と整理していきましょう。

無料相談から解決までの流れ

多くの弁護士事務所では、初回無料相談を行っています。費用の心配をせずに相談できますので、この機会をぜひ活用し、まずは第一歩を踏み出しましょう。

  1. 無料相談の予約
    法人破産に詳しい弁護士事務所を探し、電話やメールで相談の予約をします。この時、「法人破産を検討している」「連帯保証人になっている」など、おおまかな状況を伝えておくとスムーズです。
  2. 初回無料相談の実施
    弁護士と面談し、以下の内容を説明します。
     ・会社の現状と財産状況
     ・借金や支払いの状況
     ・代表者個人の立場(連帯保証人かどうかなど)
    正直にすべてを隠さずに話すことが最も大切です。弁護士は、状況を元に今後の見通しや選択肢、費用などを説明してくれます。
  3. 正式な依頼の検討
    初回相談後、その場で契約する必要はありません。複数の弁護士事務所を比較し自分に合った事務所を選ぶことも可能です。無理に決めず、冷静に検討しましょう。
  4. 弁護士との契約と手続きの開始
    依頼を決めたら、弁護士と委任契約を結びます。契約後、弁護士はすぐに債権者へ「受任通知」を送付し、督促をストップさせます。

    その後は、弁護士が中心となって、手続きを進めていくのです。あなたは、弁護士の指示に従い、必要な情報提供や書類準備に協力してください。

専門家への相談は、問題を解決へと導く一つの有効な手段です。法律の力を借りれば、借金の悩みも落ち着いて整理しやすくなります。まずは情報を集め、信頼できる弁護士を探しましょう。

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この記事に関係するよくある質問

会社が破産したら社長はどうなる?
会社が破産すると、破産管財人が清算業務を担当するため、社長は経営の責任からは解放されます。ただし、破産手続きが円滑に進むよう、破産管財人の業務には協力が必要です。また、社長が連帯保証している借金については、「経営者保証ガイドライン」や破産手続きにより免除されることがあります。
法人破産にかかる費用はいくら?
法人が破産する場合、費用の目安はおおよそ40万円〜80万円ほどです。これは手続きが完了した段階でかかる費用ですが、多くのケースでは、着手金に報酬金が含まれており、追加費用が発生しないこともあります。
法人破産を放置するとどうなる?
法人破産を行わずに放置すると、債権者が会社や代表者の財産を差し押さえる可能性があります。債権者が裁判で勝訴し、支払い命令が出されたにもかかわらず、返済が行われない場合、不動産・預金・売掛金・設備などが差し押さえの対象になります。
会社をたたむと残ったお金はどうなる?
会社を清算する際に残ったお金(残余財産)は、まず借金の返済にあてられます。すべての債務を返済したあとに残った財産がある場合は、株主に持ち株数に応じて分配されます。なお、出資額を超える分配には課税されるため、会社は確定申告を行う必要があります。

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