個人再生(民事再生)
2024.07.21 ー 2025.10.25 更新
返済に追われる毎日から抜け出したいと思いながらも、自己破産は避けたいという方にとって、個人再生は大きな希望となる制度です。
本記事では、個人再生の基本的な仕組みや、借金がどのくらい減るのかといった具体的な効果、利用条件について解説します。さらに、手続きの流れ、メリット・デメリット、他の債務整理との比較、費用や期間、実際の解決事例までを網羅的にご紹介します。
こんな人におすすめの記事です。
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個人再生は、裁判所を通じて借金を大きく減額し、原則3年間で分割返済していく法的な債務整理手続きです。自己破産のように財産を失うことなく、マイホームを守りながら借金問題を解決できるのが特徴です。
個人再生では、借金総額に応じて法律で定められた最低弁済額まで債務を圧縮できます。具体的な減額幅は以下の表の通りです。
| 借金総額 | 最低弁済額 |
| 100万円未満 | 借金総額のまま |
| 100万円以上500万円未満 | 100万円 |
| 500万円以上1500万円未満 | 借金総額の5分の1 |
| 1500万円以上3000万円未満 | 300万円 |
| 3000万円以上5000万円以下 | 借金総額の10分の1 |
例えば、合計800万円の借金がある場合、個人再生で返済額を160万円(800万円の5分の1)まで減らせる可能性があります。これを3年間で分割返済すると、月々の返済額は約4万4000円です。
ただし、実際の返済額は、「最低弁済額」と「清算価値」(もし自己破産した場合に手放す財産の合計額)のうち高い方の金額になります。財産が多い場合は、清算価値が最低弁済額を上回り、返済額が増える可能性があります。
住宅ローン特則を利用する場合、住宅ローンは減額されずそのまま支払い続けるため、住宅ローンと個人再生後の返済額の両方を支払える経済力があることが前提です。
個人再生を利用するには、以下の要件を満たす必要があります。
これらの条件を満たしていても、債権者の同意が得られない場合(小規模個人再生の場合)や、裁判所が不適当だと判断した場合は手続きが認められないこともあります。
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があり、債務者の職業や収入の性質によって適用される制度が異なります。
| 項目 | 小規模個人再生 | 給与所得者等再生 |
| 主な対象者 | 個人事業主、自営業者(サラリーマンも利用可能) | サラリーマン、公務員など、給与収入が安定している人 |
| 債権者の同意 | 必要(債権者数の過半数、かつ反対債権額が総債権額の2分の1を超えないこと) | 不要(裁判所の判断のみで進行) |
| 返済額の決定方法 | 法定最低弁済額と、清算価値のうち高い方 | 法定最低弁済額、清算価値、可処分所得の2年分のうち、最も高い金額 |
| メリット | 給与所得者等再生より返済額が低くなるケースが多い | 債権者の同意が不要で、手続きをスムーズに進められる |
| デメリット | 債権者の反対があると手続きが難しくなる | 可処分所得の2年分が加わるため、小規模個人再生より返済額が高くなる場合がある |
実務上、サラリーマンの方でも債権者の反対が予想されない限り、返済額が少なくなる傾向のある小規模個人再生を選ぶのが一般的です。ただし、一部の債権者が反対する方針の場合、給与所得者等再生を選択せざるを得ないこともあります。
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個人再生は法律に沿って進める手続きのため、決められた順序でステップを踏んでいくことになります。弁護士のサポートがあれば、スムーズかつ確実に進められるでしょう。
個人再生を検討する第一歩は、債務整理に詳しい弁護士に相談することです。以下の内容について、あなたの状況を正直に伝えましょう。
多くの法律事務所が初回相談を無料で行っており、個人再生が最適な選択肢なのか、他の債務整理との比較も含めてアドバイスを受けられます。
この段階で大切なのは、信頼できる弁護士を見つけることです。複数の事務所で相談し、疑問点を解消しながら、納得のいく選択をすることが重要です。弁護士はあなたの状況に応じて、個人再生のメリット・デメリット、必要な条件などを詳しく説明してくれます。
相談を通じて、個人再生の具体的な見通しや、手続きにかかる期間、費用などについても理解を深めることができます。不安な点を一つずつ解消していくことで、安心して次のステップに進む準備が整います。
個人再生を進めることが決まったら、正式に弁護士と委任契約を結びます。契約書には、着手金や報酬、事務手数料などの弁護士費用、支払い方法、業務内容などが明記されていますので、内容をしっかり確認してください。不明な点があれば、その場で質問してクリアにしておくことが大切です。
多くの法律事務所では、依頼者の経済状況を考慮し、着手金の分割払いに対応しています。月々の返済に苦しんでいる状況を理解し、無理のない範囲での分割プランを提案してくれるはずです。契約後、弁護士はあなたの代理人として活動を開始します。
弁護士との契約は、個人再生手続きを円滑に進める上で非常に重要です。専門家である弁護士が代理人となることで、複雑な法的手続きを適切に処理し、あなたの権利を守りながら借金問題の解決へと導いてくれます。
弁護士との契約が完了すると、すぐに全ての借入先(債権者)に「受任通知」が送られます。これは「弁護士があなたの代理人になり、債務整理手続きを開始した」ことを正式に知らせる書面で、法的な効力を持つ大切な通知です。
受任通知が債権者に届いた時点で、貸金業法に基づき、債権者からの直接の督促や取り立て行為は法的に禁止されます。これにより、借金の返済は一時的にストップし、精神的な負担が大きく軽減されます。この期間中に、あなたは今後の生活再建計画に集中できるようになります。
返済が止まることで、これまで返済に充てていたお金を弁護士費用や裁判所費用の積立に回せるようになります。これは、経済的に追い詰められた状況から抜け出し、新たなスタートを切るための大きな一歩となります。
受任通知の送付後、弁護士は各債権者に対して、これまでの取引履歴の開示を求め、正確な借金総額を調査します。この調査は、個人再生手続きにおける正確な債務額を確定するために不可欠な工程です。
弁護士は、利息制限法に基づいて金利を計算し直し(引き直し計算)、過去に支払いすぎた利息(過払い金)が発生していないかを確認します。これにより、当初の借金総額よりも実際の債務が少ないことが判明する場合や、過払い金が返還される可能性もあります。
この債権調査には通常1〜2ヶ月程度の期間がかかります。正確な債務額が確定することで、再生計画案の基礎となる情報が揃い、より現実的で実現可能な返済計画を立てる準備が整います。
債権調査の過程で、過去の取引履歴から利息制限法を超える金利が適用されていた期間があれば、過払い金が発生している可能性があります。弁護士はこれを詳細に調査し、過払い金の有無とその金額を特定します。
過払い金が見つかった場合、その金額を借金総額から差し引くことで、債務がさらに減額されることがあります。場合によっては、借金がゼロになり、過払い金が返還されるケースもあります。過払い金は、個人再生手続きの費用に充当することも可能です。
過払い金の有無は、借金問題の解決方法や再生計画の内容に大きく影響するため、この調査は非常に重要です。専門家である弁護士の知識と経験が、あなたの借金問題を有利に進めるためのポイントとなります。
正確な債務額が確定したら、裁判所への申立てに必要な書類の準備に入ります。個人再生の申立書類は非常に多岐にわたり、以下のような、数十種類の書面が必要となります。
これらの書類は、あなたの現在の経済状況や財産状況を裁判所に正確に伝えるためのものです。特に、「継続的な収入が見込める」という個人再生の要件を満たすために、収入に関する書類は非常に重要です。弁護士が書類作成をサポートしてくれますが、あなたは必要な資料の収集に協力する必要があります。
書類に不備や不足があると、手続きが遅れたり、最悪の場合は申立てが却下されたりする可能性もあります。そのため、弁護士と密に連携を取りながら、正確かつ迅速に書類を準備することが、スムーズな手続きにつながります。
申立書類が全て揃ったら、あなたの住所地を管轄する地方裁判所へ個人再生の申立てを行います。申立てと同時に、申立手数料として収入印紙代1万円、官報公告費約1万2000円、そして債権者への通知などに使用する郵便切手代数千円程度(債権者の数による)を裁判所に納めることになります。
この申立てによって、あなたの借金問題を法的に解決するための手続きが正式に開始されます。弁護士が代理人として申立てを行うため、あなたは裁判所との直接のやり取りを最小限に抑えることができます。
申立て後、裁判所は提出された書類を審査し、個人再生の要件を満たしているか、申立人に手続きを進行させるだけの能力があるかなどを確認します。この審査が、次の「再生手続開始決定」へとつながる重要なステップです。
東京地方裁判所など一部の裁判所では、個人再生手続きにおいて「個人再生委員」が選任されるのが一般的です。個人再生委員は、裁判所の監督下で、あなたの財産状況や収入状況、再生計画案の妥当性などを調査し、手続きが適正に進むよう助言・監督する役割を担います。
再生委員が選任された場合、あなたや弁護士との面談が行われます。この面談では、以下の内容について詳しく聞かれることになります。
正直かつ具体的に答えることが重要です。
面談を通じて、再生委員は再生計画案の実現可能性を検討し、裁判所に対して意見書を提出します。この意見書は、裁判所が再生手続きを開始するか否か、あるいは再生計画を認可するか否かを判断する上で重要な要素となります。
申立てと裁判所による審査、必要に応じて再生委員との面談を経て、個人再生の要件が満たされていると判断されれば、裁判所から「個人再生手続開始決定」が下されます。この決定をもって、正式に個人再生手続きがスタートします。
開始決定は、国が発行する広報誌である「官報」にも公告されます。これにより、あなたの個人再生手続きが公的に知られることになりますが、一般の人が官報を日常的に確認することはほとんどありません。
この決定により、債務整理の対象となる借金が確定され、次のステップである再生計画案の作成へと移行します。開始決定は、借金問題の解決に向けた大きな節目であり、手続きの本格的なスタートを意味します。
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再生手続開始決定が下されると、裁判所は各債権者に対し、あなたの債権額を届け出るよう通知します。債権者は、裁判所が定めた期限内に「債権届出書」を提出し、個人再生手続きにおける債権額を確定させます。
弁護士は、債権者から提出された債権届出書の内容を精査し、事前に調査した借金総額と相違がないかを確認します。もし、債権届出書の内容に誤りや不当な点があれば、異議を申し立てることもできます。
このステップで、個人再生の対象となる全ての債務の額が最終的に確定します。この確定された債務額に基づいて、具体的な返済計画である「再生計画案」が作成されることになります。債権届出は、再生計画案の基礎となる重要なプロセスです。
債権額が確定すれば、いよいよ「再生計画案」の作成と提出です。再生計画案は、減額された借金をどのように返済していくかを具体的に示した計画書であり、月々の返済額、返済期間(原則3年、最長5年)、返済方法などを明確に記載します。
この計画案は、あなたの収入や家計状況を考慮し、現実的かつ実現可能な内容でなければなりません。弁護士は、あなたの経済状況を詳細に分析し、無理なく返済を続けられる計画を策定するサポートを行います。住宅ローン特則を利用する場合は、住宅ローンの返済計画も詳細に記載します。
再生計画案は、裁判所だけでなく債権者にも提示され、その承認を得る必要があります(小規模個人再生の場合)。この計画案が、あなたの新しい生活再建の道筋を示す非常に重要な書類となります。
再生計画案が提出されると、債権者に対してその内容が通知され、意見を述べる機会が与えられます。小規模個人再生の場合、再生計画案の認可を得るためには、債権者による「書面決議」が必要です。この決議では、債権者数の過半数、かつ反対した債権者の債権額が総債権額の2分の1を超えないことが条件となります。
一方、給与所得者等再生の場合は、債権者の決議は不要で、裁判所が債権者からの意見を聴取するのみで手続きが進みます。この違いが、どちらの個人再生手続きを選択するかの大きな判断基準となります。
債権者の意見聴取期間が終了し、小規模個人再生であれば必要な同意が得られ、給与所得者等再生であれば特段の問題がなければ、次のステップである認可決定へと進むことになります。
債権者による書面決議(または意見聴取)期間が終了し、特に問題がなければ、裁判所は再生計画案を「認可決定」します。この決定により、借金が法的に減額され、新しい返済計画が正式にスタートすることが確定します。
認可決定は官報にも公告され、決定から2週間が経過すると確定します。この時点で、個人再生手続きの最も重要な部分が完了し、あなたは減額された借金に基づく新たな返済義務を負うことになります。
再生計画認可決定は、あなたが借金問題の解決に向けて大きな一歩を踏み出したことを意味します。この決定が確定すれば、あとは計画通りの返済を続けることで、借金問題からの完全な解放を目指すことになります。
再生計画の認可決定が確定すれば、いよいよ減額された債務の返済が始まります。返済は再生計画で決められた期日に、指定された方法(多くは各債権者が指定する口座への振り込み)で行うことになります。
弁護士から各債権者の連絡先や振込先口座などの詳細な情報を受け取り、返済スケジュールをしっかり確認してください。
新しい返済計画では、以前よりも返済負担が大幅に軽くなっているはずです。この機会に家計を見直し、計画的な返済を続けるための準備を整えましょう。家計簿の作成や返済用口座の開設なども有効です。
原則3年間(特別な事情があれば最長5年間)にわたって、毎月確実に返済を続けることで、法的に借金問題は完全に解決します。計画通りの返済を終えれば、個人再生の対象となった債務について、法的な支払い義務が消滅し、あなたは借金から完全に解放されます。

個人再生は、裁判所を通して行う債務整理の一つで、他の手続きにはない独自のメリットがあります。
個人再生の最大の魅力は、借金の元本を大きく減らせる点にあります。法律で定められた基準に基づき、多くの場合、借金総額の5分の1から10分の1程度まで減額できる可能性があります。例えば、500万円の借金があれば100万円に、1000万円の借金であれば200万円まで圧縮されるケースも少なくありません。
この大幅な減額により、これまで重くのしかかっていた月々の返済負担は現実的な範囲まで軽くなります。元の借金が大きく減るだけでなく、手続き開始までの遅延損害金や、将来発生する利息も原則として全てカットされるため、「返済しても元本がなかなか減らない」という状況から抜け出し、完済への道筋が明確になります。
月々の返済額が大幅に減ることで、家計にゆとりが生まれ、生活の立て直しがしやすくなります。精神的な負担も大きく軽減され、借金問題に追い詰められていた状況から解放され、前向きに生活を再建する希望を持つことができます。
個人再生の特筆すべき特徴の一つが、「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」が利用できることです。これにより、住宅ローンを支払い続けているマイホームを手放すことなく、他の借金だけを大幅に減額して整理することが可能になります。これは、原則として全ての財産を処分することになる自己破産とは大きく異なる点です。
住宅ローン特則を利用することで、家族が住み慣れた家を失う心配がなく、生活環境を維持できます。お子さんがいる場合、転校や友人との別れを避けられるため、家族への影響を最小限に抑えることができます。住まいが安定していることは、精神的な安心感にも大きく寄与します。
ただし、住宅ローン特則を利用するには、住宅ローンの滞納期間や保証会社の代位弁済の有無など、いくつかの条件を満たす必要があります。弁護士と相談し、これらの条件をクリアできるか確認することが重要ですが、マイホームを守りたい方にとって、個人再生は非常に有効な選択肢となります。
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個人再生では、手続き中も手続き後も、職業上の制限を受けることが一切ありません。これは、自己破産手続きとの大きな違いであり、特定の職業に就いている方にとって非常に重要なメリットとなります。
自己破産の場合、手続き期間中は、以下のような一部の資格を要する職業や、会社の取締役・監査役などに就くことが一時的に制限されます。
これらの職業に就いている方にとって、収入源が途絶えることは生活の危機に直結しかねません。
しかし、個人再生なら、現在の仕事を継続しながら借金問題を解決していけます。専門資格を活かした仕事をされている方や、責任ある立場にある方でも、社会的な信用やキャリアを失うことなく、安定した収入を確保しつつ生活再建を目指すことができます。安定した収入を維持できることは、個人再生の前提条件でもあるため、このメリットは手続きの成功にも直結します。

個人再生にはメリットだけでなく、避けられないデメリットも存在します。これらを事前に理解しておくことで、手続き後の生活への影響を最小限に抑えられます。
個人再生を行うと、信用情報機関に事故情報が登録され、いわゆる「ブラックリスト」に載ってしまいます。この事故情報は、手続き開始から完済、そしてその後約5年間(最長で10年間の場合もあります)にわたって記録が残り、あなたの信用情報に影響を与えます。これは、以下の各種ローンの審査に通るのが極めて難しくなることを意味します。
信用情報への影響は広範囲に及び、携帯電話の分割払い契約や、賃貸住宅の保証会社審査、さらには奨学金や一部の就職活動にも影響が出る可能性があります。現在使っているクレジットカードも、更新時期に契約を継続できないケースが多く、家族カードの審査にも影響が出ることがあります。そのため、デビットカードや現金決済への切り替えを検討するなど、日常生活での決済方法を見直す必要があります。
信用情報が回復するまでには、一定の期間が必要です。将来的に大きな買い物(住宅や車など)を検討している場合や、事業資金の借り入れが必要になる可能性がある場合は、その計画を慎重に見直す必要があります。このデメリットは、手続き後の生活設計に長期的な影響を与えるため、十分に理解し覚悟しておくことが重要です。
個人再生の手続きは、他の債務整理(特に任意整理)と比べても特に複雑で、完了までに長い期間を要します。一般的に、弁護士への相談から裁判所への申立て、そして再生計画の認可決定まで約半年から1年。その後、減額された借金を原則3年間(最長5年間)で分割返済していく期間を含めると、トータルで4年近い時間が必要になることも珍しくありません。
手続き期間中は、裁判所への定期的な報告書提出や、家計収支の詳細な記録(家計簿の提出など)、個人再生委員との面談などが義務付けられます。これらの作業は想像以上に時間と労力がかかり、仕事や家庭生活と両立させるのは決して簡単ではありません。
特に、申立書類の準備は膨大で、以下のような詳細な資料を揃える必要があり、これに不備があると手続きが遅延する原因となります。
手続きが長期にわたる中で、精神的な負担も大きくなる可能性があります。また、手続き中に収入状況が大きく変わったり、転職や引っ越しといった生活環境の変更があったりした場合は、その都度裁判所への報告と手続きの見直しが必要になることもあります。
これらの複雑なプロセスを円滑に進めるためには、債務整理に精通した弁護士の専門的なサポートが不可欠です。
個人再生が他の債務整理と大きく異なる点の一つは、安定した継続収入が絶対条件となることです。裁判所は、再生計画に基づいた減額後の借金を原則3年間(最長5年間)で確実に返済できるかを厳しく審査し、収入の安定性に疑問があれば手続きを認可しません。
単に現在働いているだけでは不十分で、下記のような多角的な視点から収入の継続性が評価されます。
この「安定収入」の基準は、あなたが思っている以上に厳しいものとなる場合があります。特に、アルバイトやパート、派遣社員の場合、正社員と比較して審査が厳しくなる傾向があり、場合によっては手続き自体が認められないこともあります。
個人事業主や自営業の方であれば、売上の季節変動や取引先の状況変化なども考慮に入れられ、より詳細な事業計画や収支見通しの提出が求められます。
さらに、手続き開始後に失業したり、病気や事故などで収入が大幅に減ったりした場合は、再生計画の実行が難しくなる可能性があります。最悪の場合、再生計画が途中で廃止され、自己破産に移行せざるを得なくなることもあります。
そのため、手続き期間中は転職や独立といった大きなキャリアチェンジは避け、現在の収入源を安定的に維持することが非常に大切です。収入が不安定な方は、個人再生以外の債務整理も視野に入れる必要があります。

債務整理には主に3つの方法があり、それぞれ特徴が大きく異なります。現在の借金額、収入状況、財産、将来の生活設計などを総合的に判断し、最適な選択をすることが大切です。
債務整理の最大の目的は借金の負担軽減ですが、減額効果は手続きによって大きく異なります。任意整理では、主に将来利息のカットが中心で、元本の減額は原則としてありません。過払い金が発生していれば、その分元本も減る可能性があります。
個人再生は、借金総額の5分の1から10分の1まで元本を大幅に減額できる可能性があるのが特徴です。例えば、借金が500万円あれば100万円に、1500万円あれば300万円まで圧縮される可能性があります。
一方、自己破産は原則として全ての借金がゼロになる(免責される)という、最も強力な減額効果を持ちます。ただし、税金や養育費など、一部の債務は免責の対象外となります。
債務整理を検討する際、現在持っている財産をどの程度守れるかも大切な判断基準です。任意整理では、交渉対象とする債務を選べるため、マイホームや車、預貯金など、原則として全ての財産をそのまま保持できます。
個人再生では、「住宅ローン特則」を利用することでマイホームを守ることが可能です。しかし、清算価値(もし今自己破産した場合に手放すことになる財産の合計額)以上の金額は返済する必要があるため、多額の財産がある場合は返済額が増える可能性があります。
自己破産の場合、生活に必要な最低限の財産(99万円以下の現金、生活必需品など)以外は、原則として手放すことになります。持ち家や車、高額な預貯金などは換価され、債権者への配当に充てられます。
債務整理の手続きは、それぞれ複雑さや所要期間が異なるため、自分の状況に応じて選択することが重要です。任意整理は、裁判所を通さず弁護士が債権者と直接交渉するため、比較的シンプルで短期間(3〜6ヶ月)で完了します。
個人再生は、裁判所を通す法的な手続きであるため、やや複雑で長期間(申立てから認可まで約1年)を要します。申立書類の準備や再生委員との面談など、多くのステップを踏む必要があります。
自己破産は、財産の有無によって手続きの複雑さが大きく変わります。財産が少ない場合は「同時廃止事件」となり比較的短期間(3〜6ヶ月)で完了することもありますが、財産が多い場合は「管財事件」となり破産管財人が選任され、1年以上かかることもあります。
どの手続きを選ぶにしても専門的な知識と経験が必要です。債務整理に詳しい弁護士や司法書士に相談し、ご自身の状況に最も適した方法を見つけることをおすすめします。
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個人再生は法的な手続きですが、実際にどんな効果があるのか、具体的な事例を通して見ていきましょう。
会社員(35歳)がギャンブル等で借金500万円を抱え、毎月15万円の返済に苦しむ状況。個人再生を申し立てた結果、借金が100万円に減額され、月々の返済が約2万8千円に。生活の立て直しが可能になりました。
住宅ローン残高2,800万円のマイホームを所有し、住宅ローンを3ヶ月延滞、他に350万円の借金を抱えていた会社員(42歳)。住宅資金特別条項付きの個人再生を申し立て、住宅ローン以外の借金350万円を100万円に圧縮。マイホームを維持しながら、月々の返済負担を大幅に軽減しました。
コロナ禍で売上が激減し、借金400万円に膨らんだ飲食店経営者(38歳)。従業員や事業を守るため小規模個人再生を選択。借金400万円を100万円に圧縮し、月々約2万8千円を3年間支払うことで、事業を継続しながら借金整理を実現しました。
複数の金融機関から合計600万円の借入があり、1社が個人再生に強く反対していた会社員(45歳)。弁護士と相談の結果、給与所得者等再生手続きに切り替え、債権者の同意なしに手続きを進めることに成功。可処分所得の2年分(約180万円)が最低弁済額となりましたが、大幅な減額を実現し、認可を得ることができました。
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個人再生の手続きを始める前に、必要な費用と期間の全体像を理解しておくことはとても重要です。
弁護士費用は一般的に30万円から60万円程度が相場です。多くの法律事務所では月額2万円から5万円程度の分割払いに対応しており、弁護士に依頼した時点で債権者への返済が一時的にストップするため、その分の金額を弁護士費用の積立に充てられます。
初回相談を無料としている事務所も多いので、事前に費用の詳細や支払い方法について確認しましょう。
弁護士費用とは別に、裁判所に支払う費用が発生します。これらは法律で定められた金額で、分割払いはできません。
個人再生の手続きは、申立てから認可決定まで、概ね6ヶ月から10ヶ月程度の期間がかかります。
この期間中は、弁護士と密に連絡を取り、必要な書類準備や家計状況の整理を継続的に行うことが求められます。
個人再生の費用が払えない?弁護士費用の相場と負担軽減のための対処法を解説
個人再生を検討しているけれど、弁護士費用が払えないときに何をすればいいのかわから...

個人再生は、借金問題を解決し、マイホームを守りながら生活を再建できる有効な制度です。しかし、その効果を最大限に活かすには、制度の仕組みやメリット・デメリットを正しく理解し、ご自身の状況に合っているかを見極める必要があります。
個人再生が適用できるかどうかは、収入の安定性、借金の総額、財産の状況、家族構成など、様々な要因が複雑に絡み合って判断されます。また、手続きの複雑さや信用情報への影響、安定収入の必要性といったデメリットも考慮が必要です。
これらの判断は専門的な知識なしには適切に行えません。債務整理に詳しい弁護士や司法書士といった専門家への相談が不可欠です。
一人で抱え込まず、まずは専門家に話を聞いてもらうことから始めてみてください。適切なアドバイスを受けることで、あなたの状況に最も適した方法で借金問題を解決し、新たなスタートを切ることができます。
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