2026.03.31 ー 2026.03.31 更新
売掛金が回収できなかったり、貸したお金が返ってこなかったりすると「裁判を起こすしかないのか」と悩むことでしょう。しかし、裁判は手間も費用もかかるため、可能な限り避けたいと考えるものです。
裁判を避けつつも法的な回収手段として、支払督促があります。支払督促は、裁判所に出廷せず書類だけで申し立てられる債権回収の手続きです。
印紙代は通常訴訟の半額で済むのに対し、相手から異議が出ると訴訟に移行するため、使いどころの判断が欠かせません。
本記事では、支払督促の仕組みと費用、申立てから強制執行までの流れ、届いた場合の対処法をわかりやすく紹介します。
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支払督促とは、裁判所書記官を通じて相手方に金銭の支払いを命じる法的手続きです。通常訴訟と比べて印紙代が半額で済み、裁判所へ出廷する必要もありません。
支払督促の概要を、以下4つの観点から解説します。
一つずつ見ていきましょう。
支払督促では裁判所書記官が書類審査のみで発付することから、請求できるのは、金銭の支払いを目的とする債権に限られます。対象となる代表的な債権と対象外の請求を整理しました。
慰謝料のように金額の算定に争いが生じやすい請求は対象外であるため、通常訴訟や調停での解決を検討してください。請求したい債務が支払督促の対象か不安な時は、管轄の簡易裁判所へ事前に問い合わせると良いでしょう。
支払督促は裁判所に一度も出廷する必要がなく、書類の提出だけで完結します。通常訴訟では口頭弁論への出席が必要であることから、手間がかからない方法といえます。
申立書の提出方法も柔軟で、窓口への持参や郵送、オンラインにも対応しており、忙しくて平日に足を運べない方でも自分のペースで進められるでしょう。
書類を提出したら、書記官による書類審査のみで進行します。
支払督促の印紙代は、同じ請求額の通常訴訟と比べて半額で済みます。請求額が大きくなるほど差額も広がるため、費用面のメリットは大きいようです。
請求額ごとの印紙代を比較すると、以下のとおりです。
印紙代の他に郵便切手代が債務者1名あたり1,000〜1,500円程度かかるものの、総額でも数千円〜数万円に収まるケースがほとんどです。
支払督促には請求額の上限がありません。1,000万円を超える債権でも同じ半額ルールが適用されるため、金額が大きいほど費用対効果は高まります。
支払督促を放置すると、給与・預金・不動産といった財産が裁判所の命令で差し押さえられます。一般的な督促状や催告書は任意の催告に過ぎず、無視してもただちに財産を奪われることはありません。
一方、支払督促は裁判所書記官が発付する公的な手続きです。債務者が2週間以内に異議を申し立てなければ、仮執行宣言の申し立てが可能です。
確定判決と同等の効力を持つ「債務名義」が成立し、債権者は強制執行を申し立てる権限を手にします。
差し押さえの対象は幅広く、勤務先の給与の一部、銀行口座の預金残高、不動産や自動車にまで及びます。届いた書類が支払督促であれば、督促状とは法的な重みがまったく異なります。
支払督促と混同されやすい督促状と催告書の違いを、以下の表にまとめました。
上記より、支払督促は他2つの書類と法的効力がまったく異なります。
専門家プロファイルに寄せられた、少額債権の回収に悩む個人事業主からの相談を見てみましょう。
引用:専門家プロファイル|小額債権の回収について
売掛金が回収できない問題は、事業の資金繰りに直結する深刻な悩みです。相手との交渉がうまくいかず、精神的に追い詰められてしまう方も少なくありません。
もし法的な手続きを検討している、あるいは回収の目処が立たずご自身の債務返済に不安を感じているなら、一度専門家に相談してみませんか。
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支払督促は迅速かつ低コストな手続きですが、万能ではありません。申立て前に押さえておくべきデメリットが3つあります。
理解しておかないと「裁判したほうが手間が少なかった」ということになりかねないため、一つずつ理解しておきましょう。
債務者が異議を申し立てると、支払督促は自動的に通常訴訟へ移行します。異議は書面を出すだけで成立し、理由は問われないため、債務者にとってハードルはきわめて低いものです。
移行後の訴訟は原則として債務者の住所地を管轄する裁判所で開かれます。たとえば、東京の債権者が福岡在住の債務者に申し立てた場合、異議が出れば福岡の裁判所へ出廷しなければなりません。往復の交通費や現地の弁護士への依頼費用も発生します。
相手が争う姿勢を見せる可能性が高い場合は、最初から通常訴訟を選ぶほうが良いでしょう。結果的に時間と費用を抑えられます。
支払督促は現住所に直接届ける「特別送達」が必須であり、転居や行方不明で届かなければ手続きが止まります。通常訴訟の「公示送達」のような制度が認められていません。
相手の住所が確認できない時点で、申立て費用と準備の労力が無駄になるリスクがあります。
申立て前に住所の確実性を確認する手段は、以下のとおりです。
調査会社への依頼費用が数万円〜十数万円かかる点には注意してください。少額の売掛金回収では、調査コストが債権額を上回るケースも珍しくありません。
相手の所在に少しでも不安がある場合は、最初から通常訴訟を選ぶほうが早く回収へたどり着けるでしょう。
契約内容の解釈や代金の計算方法など、債権の存在や金額自体に争いがあるケースでは、支払督促は避けたほうが賢明です。
債務者が「金額が違う」「すでに支払った」と考えていれば、異議申立ては確実に出ます。異議が出れば通常訴訟に移行し、支払督促にかけた時間がまわり道になります。
最初から訴訟を選んでいれば、証拠の整理や主張の組み立てに集中でき、解決までの期間を短縮できるケースが多いようです。相手がこれまでの交渉で支払義務や金額を認めているかどうかが判断基準になります。
請求書を送っても反論や無視が続いている場合は、通常訴訟を最初の方法として検討してください。
専門家プロファイルでは、法律の専門家がこのような質問に回答しています。
引用:専門家プロファイル|支払督促の異議申し立てと裁判
このように、個人間の少額な金銭トラブルであっても、法的な手続きには専門知識が必要です。費用倒れを心配して泣き寝入りする前に、一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
全国には、無料相談や初期費用0円で対応してくれる弁護士・司法書士事務所も数多くあります。まずは気軽にあなたの状況を話してみることから始めましょう。
支払督促の申立てから強制執行までは、以下6つの段階で進みます。
全体の流れを把握しておけば、期限切れによる失敗を防ぎながら債権回収を進められるでしょう。
申立書の書式は、裁判所の公式サイトからダウンロードできます。用途別に分かれているため、自身の債権内容に合ったものを選んでください。
記載項目は、当事者の氏名・住所・電話番号、請求金額、請求の原因などです。金額の根拠となる契約書や請求書の内容と照合しながら記入します。
オンライン申立て(督促手続オンラインシステム)も利用可能ですが、東京簡易裁判所に手続きが一元化される仕組みです。初回のシステム登録にやや手間がかかるため、件数が少なければ紙での提出が手軽です。
参照:支払督促で使う書式|裁判所
申立書の提出先は、債務者の住所地を管轄する簡易裁判所です。提出時には申立書に収入印紙と郵便切手を添付します。申立人が法人の場合は、追加で登記事項証明書が必要です。
収入印紙代は訴訟の半額程度で済みます。郵券代は裁判所ごとに異なるものの、おおむね1,000〜1,500円程度が目安です。
提出方法は窓口持参と郵送が一般的で、窓口なら書記官に不備を指摘してもらえます。郵送は往復の日数がかかるため、スケジュールに余裕を持たせておきましょう。
申立書に不備がなければ、裁判所書記官が書類審査のみで支払督促を発付します。この段階では、債務者の言い分を聴かずに発付される一方的な手続きです。
支払督促の正本は、特別送達で債務者に届けられます。配達員が直接手渡しし、受領の記録が残るため、届いていないという主張は基本的に通じません。
送達が完了した時点から異議申立て期間がスタートします。債務者が2週間以内に異議を申し立てれば通常訴訟へ移行し、異議がなければ次の段階に進めます。
申立てから送達完了までの所要期間は、おおむね2〜4週間です。
債務者が支払督促の受領から2週間以内に異議を申し立てなければ、債権者は仮執行宣言を申し立てることができます。債権者が仮執行宣言申立書を提出し、裁判所書記官が要件を確認したうえで、仮執行宣言が付与されます。
絶対に見落としてはいけないのが申立て期限です。異議期間の経過後30日以内に仮執行宣言を申し立てなければ、支払督促自体が効力を失います。期限に間に合わせるためのポイントを、以下にまとめました。
仮執行・宣言申立書は同じ簡易裁判所へ提出します。収入印紙代は不要で、必要な費用は郵便切手代のみです。
仮執行宣言付・支払督促が債務者に届くと、強制執行が可能な状態が整います。送達方法はSTEP3と同じ特別送達です。
送達後に債務者にはもう一度2週間の異議申立て期間が与えられ、期間内に異議がなければ債務名義となり、支払督促が確定します。
債務者が2週間以内に異議を申し立てた場合は通常訴訟へ移行し、相手方の住所地を管轄する裁判所で出廷することになります。仮に訴訟へ進んでも、契約書や取引記録がそろっていれば債権者側に不利にはなりません。証拠書類を十分にそろえておく準備が大切です。
仮執行宣言付・支払督促が確定しても、自動的にお金が戻ってくるわけではありません。債権を実際に回収するには、強制執行の申立てが必要です。
強制執行とは、裁判所の力を使って債務者の財産をお金に換える手続きです。
差押えの方法は主に4種類あり、相手方の財産状況に応じて選びます。
上記に加え、債務者の人数に応じた予納郵便切手が必要になります。
最も手軽なのは預金差押えで、銀行名と支店が分かれば短期間で回収にいたるケースが多いようです。給与差押えは勤務先の情報が必要ですが、分割回収に向いています。
相手の財産情報がわからない場合は、弁護士会照会や財産開示手続を活用する方法もあります。
専門家プロファイルに寄せられた、知人への貸金返済トラブルに関するお悩みに対し、司法書士の渡邊亜紀子さんが回答しています。
引用:専門家プロファイル|借金返済に応じない知人について
親しい間柄だからこそ、お金のトラブルは精神的にもつらいものですよね。法的な手続きは複雑で、一人で抱え込まずに専門家の知恵を借りることが解決への近道です。
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裁判所から支払督促が届いた場合、受け取った日の翌日から2週間以内に対応しなければ、差押えへと進むことになりかねません。
支払督促が届いたときに対応すべき内容について解説します。
期限を過ぎると対抗手段が大幅に制限されるため、落ち着いて確認していきましょう。
届いた書類が架空請求の可能性はゼロではない以上、まずは簡易裁判所の代表番号に電話で問い合わせてください。電話番号は書類に記載されているものではなく、自分で調べてください。
架空請求のよくある特徴は、以下のとおりです。
本物の支払督促は特別送達で届くため、ポストに直接投函されたハガキやメールは偽物と判断して問題ありません。
支払督促に同封されている異議申立書に必要事項を記入し、受け取った日の翌日から2週間以内に発送元の簡易裁判所へ提出してください。詳しい反論理由は書かなくても受理されます。
署名または記名押印の要件については、提出前に管轄の簡易裁判所に確認しておくと良いでしょう。異議申立書を出すと手続きは自動的に通常訴訟へ移行します。原則として、相手方の住所地を管轄する裁判所で裁判が開かれます。
法的な争点が複雑な場合や相手方が遠方の場合は、異議を出す前に弁護士へ相談しておくと自分の主張や反論の見通し、証拠の準備方針を整理できるでしょう。
強制執行を回避するには、まず支払督促が届いてから2週間以内に「異議申立書」を提出する必要があります。
異議申立てによって通常訴訟へ移行すると、後日、裁判所から第1回期日の「呼出状」が届きます。この呼出状に対して何も対応せず欠席すると、債権者の主張が全面的に認められた判決が出る可能性が高まります。期日までに反論をまとめた「答弁書」を提出するには専門的な知識が必要になるため、早めに弁護士へ相談してください。
内容に心当たりがある場合、異議申立書で分割払いを希望して和解交渉に進むことも可能です。ただし、長期間返済していない借金の場合、分割払いを希望すると「時効」が使えなくなるリスクがあるため、提出前に専門家へ相談することをおすすめします。一括払いが難しい時は、債務整理するのも選択肢の一つです。
債務整理の主な種類は、以下の3つです。
債務整理が適切かどうかは自分だけで判断せず、専門家に相談してください。弁護士や司法書士への相談は、受け取った直後が理想的です。
債務整理の具体的な手続きや費用については、以下の記事で詳しく解説しています。
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支払督促が届いたら、できるだけ早く専門家に連絡してください。異議申立ての期限はわずか2週間で、自力でこなすには時間的余裕がほとんどありません。
専門家に依頼すれば、異議申立ての代理だけでなく、訴訟移行後の対応や債務整理の提案まで任せられます。法テラスを利用すれば弁護士費用の立替制度を受けられ、初回相談を無料で実施している事務所も多いようです。
相談時には、以下の書類を用意しておくとスムーズです。
弁護士への相談は差押えや敗訴を防ぐ対策となりえるため、届いたその日のうちに動き出しましょう。
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強制執行にいたると、債務者本人の財産が差し押さえられます。親や配偶者の財産が対象になることは基本的にありません。
差押えは事前の連絡なく実行されます。財産を隠そうとする行為は強制執行妨害目的財産隠匿罪に該当する恐れがあるため、避けてください。
給与差押えでは勤務先に裁判所から差押命令が届き、毎月の給与から一定額が天引きされて債権者に支払われます。預金差押えには上限がなく、差押え時点の残高全額が対象となります。
ただし、生活に必要な家具・家電や、年金・生活保護費などの公的給付は差押えの禁止対象である点は押さえておきましょう。もっとも、年金や生活保護費が銀行口座に振り込まれた後は預金として扱われ、差押えの対象となる可能性があります。
Yahoo!知恵袋では、突然裁判所から支払督促が届き、病気などで支払いが困難な状況で、どう対応すればよいか悩んでいる方の声が見られました。
引用:Yahoo!知恵袋
突然、裁判所から支払督促が届くと、驚きと不安でいっぱいになりますよね。特に、病気などで支払いが難しい状況では、一人でどう対応すればよいか途方に暮れてしまうのも無理はありません。
しかし、支払督促は放置すると財産の差し押さえにつながる可能性もあるため、専門家への相談が重要です。全国の弁護士・司法書士には、借金問題の解決を得意とする専門家が数多くいます。
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支払督促は、訴訟の半額の印紙代で申立てでき、書類審査だけで強制執行まで進められる債権回収手段です。異議が出れば通常訴訟へ移行するため、慎重な判断が求められます。
債権者の方は申立て期限を見落とさないよう注意してください。届いた側は請求内容を確認し、相違がある場合は2週間以内に反論をしなければ、強制執行となります。
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