個人再生(民事再生)
2024.02.19 ー 2024.07.09 更新
個人再生は、裁判所を介して債務の一部を免除し、残りを分割で返済する法的な手続きです。
破産の恐れがあり、継続的に収入を得る見込みがある人が利用できる制度ですが、デメリットはあるのでしょうか。
本記事では、個人再生の基本知識とメリット・デメリット、個人再生が向いている人について解説します。注意点も解説するので、最後まで読み進めてください。
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個人再生は、多額の債務に悩む個人が、裁判所を介して債務の一部の免除を受け、残りを原則3年で分割で返済する法的な手続きです。
継続的に収入が得られる見込みがあるものの、借金などの負債で破産する恐れがある人が利用できます。
基本的には弁護士に依頼して個人再生の手続を行いますが、申立人に代理人弁護士がいない場合には、申立人の監督や裁判所のサポートをする個人再生委員が財産及び収入状況の調査や再生計画案の勧告を行います。
個人再生委員が選任されると15万円〜25万円の報酬(東京地裁の場合)を用意する必要があるので、自力で申立したとしても費用の節約は難しいと考えておいた方がいいでしょう。
また、個人再生には「小規模個人再生手続」と「給与所得者等再生手続」の2種類があります。債務の状況や収入を元に返済総額を1/5〜1/10程度にまで減額可能です。
減額後の債務は、原則3年(最長5年)にわたって分割して返済する計画を立て、裁判所の承認を得る必要があります。承認を得た後に計画通りに返済を行えば、残りの借金を免除されます。
個人再生は以下の流れで行われます。
債務者に弁護士がついている場合には、3の面談はスキップとなることが多いです。なお、個人再生委員が専任された場合には、15万円〜25万円の報酬(東京地裁の場合)を用意する必要があるので、自分ひとりで個人再生手続きを行なっても費用面でのメリットは少ないと言えるでしょう。
個人再生と任意整理はどちらも債務整理ですが、手続き方法に違いがあります。
個人再生は、裁判所を通じて行う法的手続きであり、借金を大幅に減らすことができますが、手続きは複雑で時間がかかります。
一方、任意整理は、債権者と直接交渉して柔軟な返済計画を組むことができます。任意整理の内容をどうするかを話し合い、利息のカットや返済期間の延長で月々の返済額を少なくすることができます。ただし、借金の元本は減額されず、差し押さえへの対応も難しいというデメリットがあります。
個人再生と自己破産はどちらも債務整理ですが、借金の返済義務が残るかなどの違いがあります。
個人再生は、債務を大幅に減額し、分割で借金を返済します。個人再生では、住宅ローン条項を使えば住宅を残すことができるので、自宅を処分したくない人におすすめです。
一方、自己破産は、債務者の全ての債務を免除する手続きで、一定額以上の財産は処分する必要があります。自己破産を行うと借金はゼロになりますが、自宅を残すことはできず、クレジットカードも使えなくなるなどのデメリットもあります。
個人再生のデメリットは以下の通りです。
それぞれについて解説します。
個人再生をしようと思っても、そもそも個人再生できないことがあります。
継続的に収入を得る見込みがない人や、負債総額が5000万円以上の人は個人再生を利用できません。また、過去7年間のうちに自己破産または給与所得者等再生をした人も個人再生できません。
個人再生を利用しても、借金はゼロになりません。借金は1/5〜1/10程度にまで減額することができますが、残った借金は返済義務があります。
個人再生を行うと、信用情報機関に事故情報が登録され「ブラックリスト」に載ります。
ブラックリストに載ると、以下のようなことができなくなります。
個人再生をおこなってから5年〜7年が経過したら事故情報は削除されますが、削除されるまでローンを組んだり、クレジットカードを作成したりすることができなくなります。
個人再生を申し立てる際には以下の書類の準備が必要です。
書類や提出する財務情報を整理する時間や、裁判所の審査結果を待つ時間が必要となるので、相談から返済計画案の認可まで1年程度かかります。そのため、すぐにでも借金を減らしたい人には不向きな場合があります。
個人再生を行うと、申立人の氏名や住所が官報に掲載されます。
官報に氏名や住所が掲載されることを拒否することはできず、削除することもできないことを覚えておきましょう。
個人再生では、税金や社会保険料、年金などの公租公課は減額の対象外です。
公租公課は原則として全額支払う必要があり、個人再生を通じても減額することはできません。
個人再生などの債務整理を検討しているなら、滞納している税金の支払いについて役所と相談しておくようにしてください。
個人再生を行うと、保証人や連帯保証人に迷惑をかけることになります。
個人再生で債務者が債務を減額しても、保証人や連帯保証人は元の債務額に基づいて返済する責任が残るためです。つまり、300万円の借金を100万円まで減額してもらった場合、減額した200万円を保証人が返済する必要があるということになります。
連帯保証人の場合は債権者の請求を拒むことができないので、連帯保証人がいる場合にはきちんと連絡をするようにしてください。
なお、住宅ローンは保証人に請求されることはありません。
個人再生を行うと、クレジットカードの作成やローンを組むことができなくなります。
個人再生をおこなってから5年〜7年が経過したら事故情報は削除されますが、それまで新規の借り入れができなくなることを覚えておきましょう。
個人再生のメリットは以下の通りです。
個人再生の大きなメリットとして、借金の元本を大幅に減らすことができる点が挙げられます。
個人再生をすれば、借金を1/5〜1/10程度にまで減額することができます。数百万の借金がある場合にも、100万円程度まで減額できる可能性があります。
なお、最低限返済しなければならない最低弁済額は100万円となり、最低弁済額の決定基準は以下から決まっています。
上記決定基準「①、②」のいずれか多い方
①負債総額に応じた次の金額
②自分の財産をすべて処分した場合に得られる金額
上記決定基準「①、②、③」のいずれか多い方
小規模個人再生手続の場合で算出した金額①②と、自分の可処分所得額(自分の収入の合計額から税金や最低生活費などを差し引いた金額)の2年分の金額とを比較して、多い方の金額。
③可処分所得基準300万円>②清算価値保障原則200万円>①借金総額から導かれる最低弁済基準100万円となった場合は、申立人は300万円を最低弁済額として返済していく必要があります。
このように給与所得者等再生手続きにおける可処分所得基準は、ざっくり2年分を通算するため高額になるケースが多いですが、再生計画に対する債権者の書面決議がないというメリットがあるため、債権者の過半数から反対されていたとしても、その他の要件さえ満たせば裁判所から認可を受けることができます。
引用:個人再生手続について
個人再生は、借金の理由や職業に関する制限がありません。
消費者金融からの借入れや、事業関連の借金、個人的な理由による借金であっても、個人再生をすることができます。
借金の返済の滞納や養育費の滞納の場合は裁判所で個人再生手続開始決定があると、それ以前になされた給与の差し押さえを止めることができます。
ただし、国民年金保険料や税金などの公租公課を滞納して給与の差し押さえが行われた場合には、給与の差し押さえを止めることができないので注意してください。
個人再生を行う際には、マイホームを残すことができます。
住宅ローンが残っている自宅を所有している場合、住宅を手放さずに個人再生を進めることができます。
住宅ローン条項を利用することで、自宅を残しながら債務整理ができるという仕組みです。家族と住む家を残しながら借金を減らすことができるのは、大きなメリットだと言えるでしょう。
個人再生では、車を残せる可能性もあります。
車を残せるのは、自動車の名義が本人の場合のみです。所有権留保状態だと、車を残すことはできないので注意してください。
個人再生が向いている人は以下の通りです。
ギャンブルによって大きな借金を抱えてしまった人に、個人再生はおすすめです。
個人再生では借金の元本を減額し、無理のない返済を実現することができます。
消費や浪費により多額の借金を抱えてしまった人にも個人再生はおすすめです。
また、個人再生をするにあたって家計簿を作成する必要があるので、自分の消費や浪費を見直すこともできます。
会社や職場に迷惑をかけたくない人にも、個人再生はおすすめです。
また、個人再生の手続きを理由に会社が従業員を解雇することも基本的には違法となっているので、クビになるリスクも低いと言えるでしょう。
ただし、会社に借金がある場合には会社にばれてしまうので注意が必要です。
車やマイホームを残したいと考えている人にも、個人再生はおすすめです。
個人再生では、生活に必要な財産を手放さずに債務を整理できるというメリットがあります。
生活基盤を維持しつつ、経済的に立て直すことが可能となります。
ただし、高級車や贅沢品は、手続き中に手放した方がお得なケースもあるので、弁護士や司法書士に確認を取るようにしてください。
個人再生のメリットやデメリットを解説してきましたが、個人再生できないケースもあります。ここからは個人再生できないケースについて解説します。
個人再生では、一部の債権者に対してのみ個人再生することは認められていません。
個人再生の手続きをする際には、債務者が抱える全ての債務に対して個人再生をする必要があります。
そのため、一部の債権者にのみ焦点を当てた個人再生の申し立ては、裁判所からの承認がおりません。「友達から借りたお金だけを減額したい」「クレジットカードの借金だけを減額したい」といったことはできないので注意してください。
個人再生の申立てが、法律で定められた棄却または却下事由に該当する場合には個人再生の手続きが開始されません。
(再生手続開始の条件)
第二十五条 次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。
一 再生手続の費用の予納がないとき。
二 裁判所に破産手続又は特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。
三 再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき。
四 不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。
引用:民事再生法
個人再生の手続きをする前に、再生手続き開始の申立の棄却・却下事由に該当していないか確認するようにしましょう。
受任通知発送後に新たな借入れをしてしまうと、個人再生ができなくなる可能性があります。
弁護士が受任通知を発送していると、借入を通常の方法で返済することができない状態を認めたことになります。
この状態で新たな借り入れをすると、「本当は返せないのに返せるふりをしてお金を借りた」として詐欺罪に問われるリスクもあります。
弁護士が受任通知を発送した後は、クレジットカードの利用など新たな借り入れをしないように気をつけてください。
借金の総額が100万円未満の場合、個人再生よりも任意整理がおすすめです。
これは、個人再生の最低弁済額が100万円を下回ることがないからです。借金の総額が100万円以下の状態で個人再生を行なっても、借金は1円も減りません。
そのため、利息カットが期待できる任意整理がおすすめです。
個人再生を申請する上では条件があります。
負債総額が5000万円以上ある場合には、個人再生よりも自己破産がおすすめです。自己破産は借金はゼロになるというメリットがありますが、自宅を残すことはできず、クレジットカードも使えなくなるなどのデメリットもあるので、どの債務整理を選べばいいか弁護士や司法書士に確認するようにしてください。
個人再生を利用するためには、安定した収入が必要です。これは、個人再生が継続的に収入が得られる見込みがあるものの、借金などの負債で破産する恐れがある人が利用できる制度だからです。
無職であったり、不安定な収入しかない場合には、個人再生以外の債務整理を検討してください。
個人再生を考えているけれど、手持ちの財産が多いとどうなるのでしょうか。実は、個人再生には申し立てできる人の条件があり、多額の財産を持っている場合、その条件に合わないことがあります。
個人再生を利用しようとしても、多額の財産がある場合、返済能力があると見なされ、個人再生の適用外となることがあります。
その理由としては、財産を売却して負債を返済できる可能性があると判断されるためです。財産を持っているにも関わらず、債務を減額してもらうことは、他の債務者や債権者にとって公平ではないとされる場合があります。
多額の財産がある場合は、その資産をどのように扱うかがキーポイントになります。適切なアドバイスを得るためにも、多額の財産がある場合の最適な債務整理方法について、弁護士や司法書士に相談することが重要です。
ほとんどないケースですが、小規模個人再生で債権者から反対された場合、手続きが進まないことがあります。
債権者は、再生計画に対して異議を唱える権利を持っており、計画が不公平であると感じた場合や、債務者の返済能力に疑問を持つ場合には、計画に反対する権利があります。
再生計画が認可されなかった場合には、個人再生の手続きは「廃止」となります。令和3年 司法統計年報(民事・行政編)のデータによると、廃止の割合は全体の4%と低い数字となっていますが、反対されて個人再生できないケースもあることを覚えておきましょう。
個人再生を行うには、裁判費用や弁護士費用の支払いが必要です。
裁判費用や弁護士費用を準備できない場合には、手続きを進めることができません。
なお、個人再生に必要な金額は30万円〜60万円程度です。
関連記事:個人再生にかかる費用の相場はいくら?費用が払えない場合の対処法も解説!
個人再生をするときの注意点は以下の通りです。
個人再生はマイホームを残せるというメリットがありますが、必ずしも自宅を残せるわけではないということに注意が必要です。
返済計画が裁判所に承認されなければ、家を手放した方がお得なこともあります。
多額の財産を所有している場合には、個人再生を利用しても最低弁済額が高くなってしまいます。
これは、清算価値保障原則と呼ばれる破産時の予想配当額を下回らない額(上回る額)を弁済する必要があるという原則があるためです。
清算価値保障原則を守れていない場合には、再生計画案を裁判所に認めてもらえません。
高額な財産を持っている場合には毎月の支払額が増えることを覚えておきましょう。
個人再生を行っても、養育費は減額されません。
養育費は子どもの権利と直結するため、債務整理の手続きにおいては保護されるべきものとされています。
そのため、個人再生を行っても、養育費は元の金額のまま支払う必要があります。
関連記事:個人再生で教育費・奨学金の返済はどうなる?保証人への影響も解説!
個人再生を行っても、罰金や過料などの刑事罰に基づく金銭的債務は減額されません。
交通違反やその他の違法行為による罰金等は、個人再生を行なっても全額を支払う必要があります。
これらの公的な債務を考慮に入れて返済計画を立てるようにしてください。
本記事では、個人再生の基本知識とメリット・デメリット、個人再生が向いている人について解説しました。
個人再生のメリット・デメリットは以下の通りです。
個人再生のメリット
個人再生のデメリット
メリットとデメリットを比較して、個人再生を行うか検討してみてくださいね。個人再生の費用を支払えない場合にはこちらの記事もご覧ください。
個人再生にかかる費用の相場はいくら?費用が払えない場合の対処法も解説!
なお、債務急済ではエリア別に債務整理におすすめの弁護士・司法書士を紹介しています。こちらから専門家の検索ができるので、ぜひ試してみてくださいね。
個人再生を行えば、返済総額を1/5〜1/10程度にまで減額でき、マイホームや車を残せるというメリットがあります。
一方で、クレジットカードは使えなくなる、保証人や連帯保証人に迷惑をかけてしまうなどのデメリットがあります。
個人再生の申し立てをしても、裁判所から会社に通知が行くことはないのでバレません。
ただし、会社に借金がある場合には会社にバレてしまいます。
より詳細な記事はこちら
個人再生を行うと、クレジットカードの作成はできなくなります。
個人再生をおこなってから5年〜7年が経過したらクレジットカードを作れるようになるので、それまではデビットカードを使うことをおすすめします。
この記事の監修者
債務整理実績: 1万5821件(2019年4月調べ) 行政書士 司法書士 くすのき総合法務事務所 代表 / 埼玉司法書士会(登録番号第1124号)/ 簡裁訴訟代理等関係業務認定(第601564号) / 埼玉県行政書士会(登録番号第07131937号)
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